‘チカラ’への意志 |
さて、製品についてのお話。
最近は春らしく、暖かくなってきたことで、
皆さんの釣行回数も増えてきていると思いますが、
同時に、ロッドに関するご質問等も同じように増えてきたので、
よく頂くご質問に関して、この場で簡単にお答えしたいと思います。
(そんなの知ってるぜ!という方も、まずはご清聴願います。)
①ロッドの継ぎ目(フェルール)について
上段がスピゴットフェルール(印籠継ぎ:以下‘スピゴット)、
下段がフェラライトフェルール(並継ぎ:‘以下‘フェラライト’)です。
妄想戦士の私には何だかステキな響きですが、
それは置いておきまして・・・。
まずは、それぞれの相違。
少し分かりづらいかもしれませんが、上の写真の左側がスピゴット、
右側がフェラライトのそれぞれの接合部(オス)となり、
左側の、ブランクスに‘ペグ’(接合のための‘芯’:別のブランクス)が
挿入されているものがスピゴットの特徴です。
対してフェラライトは接合部付近のブランクスに、
脱着のための加工(塗膜であったり、カーボンシートが余分に巻いてある)がされています。
まずは、接合した状態での‘継ぎ目のスキマ’に関するご質問について。
2つ上の写真でご覧いただけるものを基本として、
接合部の化粧巻き(スレッド)の間に10~15mmの
マージンをとっております。(固着・抜けの防止のため)
新品の状態では、経年変化によるフェルール部のスリ減り(肉痩せ)を想定して、
あらかじめ長めにマージンを見越してセッティングしております。
使用(抜き差し)を繰り返すうち、フェルール部の脱着も滑らかになっていきます。
よく言われる‘肉痩せ’に関しましても5mm程度のスキマがあれば、
実際の使用においても、継ぎ目が抜けてしまうような事はございません。
余談ですが、それぐらいの状態が接合面が幅広くなることで、
ブランクス本体の性能を発揮する事に繋がります。
*一般の使用においては相当回数の脱着を想定しております。
刺さりすぎるのでは?など不具合を感じられる場合がございましたら、
弊社取扱い店までご相談ください。
(カタログの末尾の取扱い上のご注意なども合わせてご参照いただきたいと思います。)
また、スピゴットフェルール(印籠継ぎ)とフェラライトフェルール(並継ぎ)による
性能の優劣に関するご質問について。
まず、本題に入る前に、製造方法の違いについてご説明。
ロッドの製作過程において、お聞きしたことのある物の一つに
‘マンドレル(鉄芯)’というものがございます。
ブランクスを窯で焼き上げる際、
カーボンシートを巻きつけるための鉄の棒、
すなわちルアー製作など言えば、金型に当たるものなのですが、
例えば同じレングス、パワー、テーパーのシーバスロッドを製作するとして、
スピゴットとフェラライト、接合部の相違によって、
このマンドレルも全く別個の物を用います。
開発・エンジニアの視点から捉えると、
設計の自由度(テーパー・パワー)が高いのはフェラライトになります。
2本継ぎのロッドであれば、#1(1番:穂先)と#2(2番:元竿)の
マンドレルを用意することで、ある程度、テーパーやパワーの変更を
することは容易です。
接合部の2本のブランクス径がより近似するスピゴットは、
専用のマンドレルが必要となるため、テーパーやパワーを変更しようとすると、
マンドレルごと変更しなければならなくなることがあるのです。
このため、スピゴットのロッド製作と言うのは必然的にコストがかかります。
一昔前までは、スピゴットフェルール(印籠継ぎ)のロッドに、
使用上の優位点まで盛り込まれていることが多かったのですが、
実際には、現在の設計・製造技術においては接合の種類によって、
‘抜け’やテーパーデザインの優劣が左右されることはございません。
一部、見かけはスピゴットに仕上げているような商品も
市場に見受けられるようになりましたが、
全体の曲がりを見ることで一瞥することができます。
(元竿から穂先へのパワーの伝達、ベンドカーブがスムーズでないものなどは瞬間的な負荷に脆く折れやすいものなどがあったりします。)
スピゴットフェルールのロッドが上級機種に採用されることが多いのは
設計・製造・コストにおいて高い精度が要求されることによる部分が多く、
弊社としては、適材適所は勿論ございますが、
価格に応じて、より難易度の高いものを採用することで、
ロッドとしての価値観を感じていただきやすいよう留意しております。
以上のことから、弊社ではスピゴットとフェラライトという
接合部の差異によって生じる実釣面での性能の優劣と言うものは
根本的な部分では‘重要では無い’と結論を出しております。
と、上記のお話を踏まえた上での余談ですが、
前述の同レングス・パワー・テーパーのロッドを
それぞれのフェルールで製作すると、
必然的にフェラライトの方がバランスをとり易くなります。
スピゴットはペグの自重が元竿の先端に掛かるだけで、
バランスを逸してしまうことが起こるのです。
このことから、スピゴットのロッド製作は手間が掛かる・難易度が高い、
ということができるわけです。
ちなみに長いコトやっております例の試作シーバスロッドは、
まさにこの部分に注目したものとなっております。
スピゴットフェルールのロッドメイキングの指標となるのではないでしょうか?
さて、あっという間にものすごく長くなりましたので、
ゴメンなさい。続きは明日に致します。
時間が取れるか微妙ですが、次回は
・PEラインのライントラブルについて。
(ガイドに絡むというお客様の2つのケースについて)
・可動式フードナットについての考察
(ダイコーの場合:ロッドメーカーさん必見?見た目以上に必要なものとは?)
・ライン、ルアーウェイト表記について
(消費期限と賞味期限?)
などについて、ご説明してみたいと思います。
あと、本日は来年中には?の‘何じゃコリャ?’な試作が届きました。
この辺もOKが出ればご紹介いたします。